MBAゼミナール  「国際金融」

国際金融と経営環境

福井博夫


まえがき

本稿は、筆者のビジネス・スクールにおける講義、ゼミナールの記録を整理し直したものである(基本的に前著「国際金融と経営環境」の改訂版となる)。本稿では、主として筆者がこれまでの勤務において実際に参加した政策的な議論や国際機関での研究等を取り扱っている。

経験によると、ビジネス・スクールの参加者は、その職種・経歴等は多岐にわたっており(技術関係から管理職まで)、あまり専門的な議論に入ることは必ずしも適切ではないが、同時に参加者は、これまでの仕事を通じて国際金融のテーマについて何らかの問題意識を持っている人が多い。

これらの事情に鑑み、本稿では筆者の経験を踏まえて、なるべく基本的な考え方を(できれば平明な形で)提示し、議論のための材料となることを狙いとしている。この意味で本稿が何らかの参考となれば幸いである。

尚、資料未整理のところがあり、思わぬ誤記・誤解があるのではないかと危惧しているが、これらについてはご指摘を得て改定していきたいと考えている。

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国際金融をめぐる13章/目次
(附)国際機関とはどんな職場か

……………15

国際金融と言うと、関心はあるが何かなじみにくいという感じを持つのではないか。しかし、現在のビジネスは国際経済の動向と密接に関連しており、国際金融の知識は、このような国際経済の動向を理解する上で不可欠である。

言うまでもなく実際に輸出入等の仕事に当たっている場合或いは対外投資計画等を考える立場にあれば、これらの問題の理解は実務的に必要なものであるが、ここでは、これらの実務的な問題を離れ、現在の国際金融の動き或いは国際通貨制度と言うものがどのような仕組みで成り立っているのかに関する基本的な事項を取り上げることとした。 詳しくは....


第1章

国際収支は常に均衡する。それでは国際収支の黒字・赤字とは?

1. 国際収支表………・…………・…………・…………………………17

為替取引/居住者・非居住者/複式簿記のエントリー(Double entry book keeping)/

経常収支/資本収支/外貨準備の増減/誤差脱漏/総合収支・基礎

収支/IMF方式/国際収支取引記入例/自律的取引と調整的取引/経常

収支と資本収支の関係/演習/純粋の資本取引と資本の流出

2. 日本の国際収支の特徴……………………………………………41

金融仲介機能/日本の国際収支の歴史的変遷/経常収支と経済発展段階

3. リザーブ・トランシュ及びSDR………………………………46

リザーブ・トランシュ/SDR/SDRは資金か?

4. トリフィンのディレンマとドル不安……………………………53

トリフィンのディレンマ/ブーメラン通貨/新しいIMF


第2章
第2章経常収支はマクロ経済における氷山の一角?経常収支はマクロ経済における氷山の一角?

1. 国民所得勘定と経常収支…………………………………………67

GNP(国民総生産)のコンセプト/世界のGNPの分布/S=I

CA=S-I+(T-G)/Sn-In=CA/IとSの相関関係

2. 経常収支決定の1-Sバランス理論・………・……………・……74

恒等関係/1-Sバランス理論

3. 貯蓄と投資の調整・………………………・…・……………………78

貯蓄のレベル/財政収支の動向/IMFコンサルテーション・ペーパー

4. 輸入増加策に関する論点……・…………………・……・…………84

輸入優遇策の効果/前川レポート/消費の時間選好/SII/経済の開放度

或いは貿易依存度/対内・対外直接投資/近隣窮乏化政策(Beggar thy neighbor)?/日米構造協議再考

5. 経常収支の健全性と赤字の維持可能性…………………………96

経常収支の健全性/経常赤字の維持可能性

6. 外貨準備のレベル及び対外資産………………・……………・…・99

対外資産/外貨準備のレベル/重商主義

7. 国と国との競争…………………………………・………・………・105

貿易戦争/比較優位に関する論点/比較優位の原則/労働生産性の変化/

産業の育成/失業の発生と所得の不公平化論/国の競争力/政治学と経済学


第3章
第3章Jカーブ効果、マス・アベニュー・モデル?Jカーブ効果、マス・アベニュー・モデル?

1. 経常収支のフロー・アプローチ…………………………………125

弾力性アプローチ/価格効果/マス(マサチューセッツ・アペニュー・モデル/Jカーブ効果/輸出入所得弾力性効果/通商派とマクロ派

2. 弾力性アプローチに対する批判………・………・………………・133

副次効果/政策的な介入/円高恐怖症からの脱出/国益


第4章
第4章IMFの勧告(プログラム)はなぜ不人気なのか?IMFの勧告(プログラム)はなぜ不人気なのか?

1. アブソープション・アプローチ・…・………………・……………141

アブソープション

2. 為替政策・…………………………………………………..………143

弾力的為替政策/支出スイッチング(切り替え)効果/通貨切り下げ

3. マネタリー・アプローチ..…・……………………………………146

IMFのFinanciaI Programming/パフォーマンス・インディケータ-


第5章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?

(為替制度の選択)・…………………………………………..……155

1. 媒介通貨とn番目通貨問題………………・…………………・・155

直接表示/変化率の計算/切り上げ・切り下げ/媒介通貨と非対称性/基軸

通貨

2. 実効・実質為替レート…・…………………………・・……………160

実効為替レート(Effective Exchange Rate)/実質為替レート(Real Exchange Rate)/実質為替レートと産業構造/実質実効為替レート(Real Effective Exchange Rate)

3. 外国為替取引とリスク・ヘッジ…………………………………166

ディーラーとブローカー/先物取引/通貨の予約取引/通貨フューチャー

とオプション/スワップ取引

4. 為替制度の選択………………・…………………・……・…………174

変動する為替レート/固定的な相場制/政策アンカー/国際金融のトリレ

ンマ/最適通貨圏

5. 通貨投機……………・……………………………………・……・…182

投機の機能/政策矛盾/空売り/スワップ取極/キャリー・トレード/レ

パレッジ/ヘッジファンド/プログラミング/インシュランス



第6章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?為替レートの変動を前向きに予想するか、後向きに予想するか?

1. 外貨需給と取引……・……・…………・……………………………199

需給の均衡/中心レート

2. 為替レートの変動と予想…・……………………・…・……………201

トレンド線/ストラクチュラル・アプローチ(Structural Approach)/期

待/テクニカル・アプローチ(チャート)/時間軸

3. 経常収支重視説……・…………・………………………………・…206

4. 購買力平価説…………………………………..………………・…207

通貨の購買力/購買力平価/PPPが成立するための条件/ビッグ・マック・

レート/絶対的購買力平価/相対的購買力平価/s=kp/p* /PPPからのかい離

(実質為替レートの変動)/PPP回帰説/因果関係

5. マネタリー・アプローチ…………………・…・…………・…・…・-220

通貨量と為替レート

6. 金利平価説………………………………・……・…………・………222

CIP(Covered lnterest Parity)/CIPとリスク・ファクター/UIP(Un

covered lnterest Parity)/金利による構造式/金利変動と為替レート/フイッシャー効果と長期金利/日米金利差

7. オーバーシューティング・モデル・……・………・………………231

ドーンブッシュのオーバーシューティング・モデル/バブルとオーパーシユート

8. ポートフォリオ・バランス・アプローチ…・…・…………・………233


資産交換の場/リスク・プレミアム/リスク・プレミアムの推測/

1980-90年代のドルのリスク・プレミアム/リスクテイカー

9. 市場の効率性…・……………………………・…・…・…..…………239

特別利得(レント)/効率的市場仮説

10. ランダム・ウォーク………………………………………………241

ランダム・ウォーク・モデル

11. 理論の歴史的展開・……………………………・…………………・244

歴史的発展

12. 理論の応用と検証…・……………・………………………・………245

応用的アプローチ/理論の実証的検討/美人投票理論

13. 均衡為替レート……・…………………………………・…・………250


第7章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?円は使われているか?円の国際通貨としての地位は?

1. 国際通貨……….…………………・……・…………………………261

国際通貨の要件/国際通貨国の便益及びコスト/国際化の現状/国際化の

メリット/円の供給ルート


第8章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?金融政策は一面アートに近いと言われるが、そのメカニズムは?…・…273

1. 通貨制度(信用の維持と量のコントロール)…………………273

通貨/マネタリー・ベース(MB)/通貨乗数及び信用乗数/通貨当局のバランスシート

2. 介入政策……・…………・……………・…………・……・…………・281

対外資産/介入/攻撃的介入とLAWの介入/単独介入と協調介入/不胎化

(ふたいか)されない介入と不胎化された介入/介入の効果

3. 為替介入と金融政策……….………………・…・……………..…289

いわゆる日銀理論/金融政策の波及メカニズム/銀行行動と市場との対話

/介入放置等異例の措置/外貨の流出入と金融政策/MCIとFCI



第9章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?政策当局はゲームのプレーヤーか?(政策協調の試み)

1. 経済政策の外部効果・…………………………………・…・………309

変動相場制と固定相場制の違い/ゲーム的な状況/マンデルーフレミング・モデル

2. 政策協調への努力…・…・……………………………………・……317

政策協調のための条件/アメリカの特殊性等/サステナブル論争

3. 1980年代前半(プラザ合意前夜)………………………………321

レーガノミックス/燃え盛る保護主義/日米円ドル委員会/財政再建

4. プラザ合意…………・…・…………………………………………・325

レーガン大統領再選/85年9月22日5ヵ国大蔵・中央銀行会議(プラザ合意)/協調介入


5. プラザ合意以降…………………….…………………・…………327

86年の東京サミット/86年9月ワシントン会議におけるG7合意/ルーブル

合意(87年2月)/政策協調の転換期/88年6月トロント・サミット/87年

と言う年/構造協譲へ/政策協調の継続/日米或いは世界との協約性の追求



第10章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?全ては金本位制から始まった?(国際通貨制度の変遷)

1. 大恐慌と金本位制の終焉…………………………………………339

1930年代の大恐慌/第一次大戦後の動き/金本位制の特徴/金本位制の運用と経験/金本位制のデフレ・バイアス

2. 1MFの成立とプレトンウッズ体制…・……………・………・…350

1MF(国際通貨基金)の設立/世界決済機構(或いは清算銀行)/ブレト

ンウッズ体制の特徴/4つの経済的な不快ゾーン

3. ドル本位制の成立…………………・…・…・…・…・…・……………357

実際の運用―ドル本位制の特徴/ドル本位制のメリット・デメリット/覇権国理論

4. アメリカの変貌とニクソンショック……………………………361

アメリ力の変貌/アメリカの選択/ニクソン声明/ドルと金との関係/各

国の反応/固定相場制は維持できたか

5. スミソニアン合意と変動制への移行…………………………・・369

スミソニアン合意/変動制と固定制/変動相場制に対する期待

6. 変動相場制の経験…………………………..……………………371

円相場の動き/世界経済のパフォーマンス/スタグフレーションとフィリ

ップス曲線/フィリップス曲線と経済思想/変動相場制の欠陥

7. 通貨制度改革論…………………………………………………382

IMF協定4条/IMFの機能/通貨制度改革案/世界の為替制度/カレンシ

ー・ボード(CurrencyBoard)/調整問題

国際金融略年表………・………………………・……………・……401




第11章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?外為法は為替管理法に非ず?

1. 外国為替の管理に関する法律…・…………………・…………・…405

1932年資本逃避防止法とその後の発展/1949年外国為替及び外国貿易管理

法/自由化計画の推進

2. 法の改正による原則自由化…………・………・………・…………408

1980年改正法/自由化の進展/1980年法の基本的な体系

3. 1998年改正の目的とその内容……………………………………412

外国為替等審議会答申/1998年法の基本的な体系

4. 取引規制に関する重要な変化…..…………………・……………414

許可制・事前届出制の廃止/事後報告制/銀行等の確認義務/支払手段の

輸出入の届出制/有事規制の内容

5. 取引管理と外資規制………………………………………………419

6. 新しいビジネスの機会…・……………………………..…………421

自由な業務・取引分野の拡大/ビジネスへの応用(インハゥス・バンキング等)



第12章
第12章プロジェクトを超えて?−BeyondProject-(援助政策の変遷プロジェクトを超えて?−BeyondProject-(援助政策の変遷

1. 途上国経済とビジネス.……………………・……………………429

民間資金の重要性/ビジネス環境の整備

2. 開発経済学とその周辺…・……………………・…………・………43O

マドリッド総会/援助思想の変遷/ロストウ(W・W Rostow)の経済発

展段階説/ハロツドードーマー(Roy Harrod and Evsey Domar)の成

長モデル/TFP仮説/社会心理学的なアプローチ

3. 援助政策の変遷……・……………………………………・……・…439

構造主義/総合開発計画/輸入代替工業化政策/新古典派的なアプローチ

の導入/ワシントン・コンセンサス(1990年)/アジアへの関心の高まり/

日本型と言われるシステム

4. 第二世代の改革・ワシントン・コンセンサスの限界…………449

The Long March 97 in Montevideo

5. プロジェクトを超えて(Beyond Project)・制度的な改革…451

Beyond Washington Consensus/2000年の世界銀行開発レポート

6. Assessing Aid(援助の有効性)……………………………454

Assessing Aid,1998/Holistic Approach/ビジネス環境の整備/これからの援助政策の現場


第13章
第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?リコース、ノン・リコース・ファイナンスとは?(リスク・シェアリングの考え方)

1. プロジェクト・ファイナンスの歴史……………………………471

リミテッド・リコース

2. プロジェクト・ファイナンスの仕組み…………………………474

プロジェクト・ファイナンスの定義/BOT・BOO・BTO/事業主体と特

別目的会社/貸し手の確保と保証システム/資金計画・構成/プロジェク

トの当事者/リスク分担/リスク分析の方法/官或いは政府の資任/紛争

解決

3. 新しい官と民との関係………………………・・・…………………487

PFとPFI/民営化やアンバンドリングの考え方/バリュウ・フォア・マネ

ー(Value for Money:VFM)/PFI推進法


第5章為替制度は約束であり、そして、すべての約束は疑われる?附章国際機関とはどんな職場か?(知識銀行への試み)

テーマ1 理事会の役割とチェック.アンド・バランス…………496

理事会と総裁/社外取締役/取締役のためのガイドブック/プリンシパル

とエイジェント問題/一般監督責任/COSO(コーゾー)

テーマ2 組織とリーダーシップ…・…・…・…………………………503

組織と戦略/リーダーシップ/リーダーシップの明確性/ディスカッション

テーマ3 一つの組織変革の試み……………………..……・………508

資金調達部門(F-VPUnitと称する)/戦略上の課題/コンサルタントの

採用/コンサルタントによるレポートの作成/新組織

テーマ4 組織運営に関する幾つかの問題・…・…・…………………513

1. フラットな組織、ボーダーレスな(境のない)組織

2. マトリックス・マネージメントとドッテッド・ライン

マトリックス・マネージメント/ドッテッド・ライン/タスク・フォース・アプローチ

3. ワン・ストップ・ショップ

4. フロント・オフィスとバック・オフィス

5. 予算

6. Trust Building

7. デシジョン・メイキングの変化

柔らかなデシジョン・メイキング/コーチングへ

テーマ5 ミニニケーションの努力……………・……・…・………530

タウン・ミーティング/イーメイル・ライン/スタッフ・サーベイ/ワイ

ン・アンド・チーズ・パーティー

テーマ6 イノベーションのための努力……………………………534

イノベーション・マーケット/リトリートの慣行

テーマ7 人事政策・…・……………..…・…………………・…………536

1. 人事部と採用

辞令と契約/採用/人事部の機能

2. 戦略的削減

人員整理の方法/リダンダンシー/リダンダンシーのプロセス/リ

ダンダンシー手当/離職率/Exit lnterview/ジョブ・ローテーシ

ョン/プロード・バンディング

3. 勤務評定と給与

勤務評定(Performance Evaluation)/評定項目/360度評価/給

与と勤務時間/トレーニング

4. マイノリティー(或いは差別問題)に対する配慮

女性登用問題/Diversity Agreement/セクシャル・ハラスメント

テーマ8 多様な文化と組織…………………・………・……・………566

価値共同体



おわりに
おわりに

SpeakMBA ……575
おわりに 著者略歴
おわりに 参考文献………・…………・579
おわりに 索 引……………・……・…・…598
おわりに 正誤表


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